変な所にある「智歯」。抜歯するにも難しい位置の「埋伏智歯」(#親知らず #智歯 #第三大臼歯 #抜歯)

親知らずという、奥歯。
口腔内で、もっとも奥に位置している、「智歯」です。
医学用語では、「智歯(ちし)」と言われます。
英語で「wisdom tooth(知恵の歯)」と呼ばれるのは、10代後半から20代頃の知恵がついて物事の分別がつく大人になる年齢に生えてくるためです。
ちょうど学生を卒業して、社会人スタートする節目とも、時期的に合致します。
さあ、これから社会人デビュー。
そんな大事な節目に、「ちょっと待って、智歯が痛い」と、予期せずブレーキになることもあります。
そんな「智歯」ですが、
正常に生えてこない、「智歯」
変な所にある「智歯」なども、稀にあります。
このように異常のある「智歯」を、
歯科の用語では、「埋伏智歯」や、「水平埋伏智歯」と言います。
正式な解剖学的名称は、「第三大臼歯」です。
たまに変な所にある、難しい「智歯」になる人がいるのです。
高度な技術は要求されますが、正常な「智歯」抜歯と同じように、
難しい「智歯」もまた、なんとか抜歯してもらいたいところです。
難しい「智歯」についてのレポート
難しい「智歯」とは、一般的な「智歯」とは逸脱した位置にある、「智歯」のことです。
口腔外科医であっても、あまり見ることがないため、難しい「智歯」の抜歯は極めて高度な技術が要求されます。
一般的智歯の位置

ほとんどの人の智歯は、あるとしたら奥歯のひとつ奥に位置しています。
少し埋没していたとしても、歯茎が少し覆いかぶさっている程度です。
「埋伏智歯」があるという時点で、「普通ではない」といえます。
難しい「智歯」の位置

難しい「智歯」は、画像を見比べるとかなり深い位置にあることが見て取れます。
この深さにあるということは、
「智歯」の抜歯するためには、一般的「智歯」とは比べ物にならない事項が発生します。
歯茎をはじめ口腔筋を深く大きく切開し、
骨に埋まっているため骨掘削し、
必然的に多量の出血が見込まれ、
判断が難しい神経の切断撤去も視野に入ります。
位置の比較や差は?

両方比べて見ると、深さの差が明確にわかります。
画像ポイントとしては位置が近いようにも見えるものの、
これだけの差が人顔内、小さい歯が並ぶ口腔内にあるとなれば、かなり異なる位置付けといえます。
難しい「智歯」が難儀たる所以。一般的「智歯」との大きな差
それは、神経にかかる位置であるか否かの、有無です。
一般的「智歯」は完全に神経から離れているのに対し、難しい「智歯」は、神経に引っかかっている(もしくは重なっている)位置にあります。
この事が、痛みを発生するひとつの原因であり、難しい「智歯」抜歯手術が難しいと言われる要因にもなっています。

どんな痛みか?
原因の「埋伏智歯」があるのは、口腔内ということで、
外見には一才見えないものの、
痛みがあります。
血も出ていないし、骨も折れていない。
ですが同じくらい、「重症」の症状なのです。
| 痛い感じ | 症例 |
|---|---|
| 素で常に痛い | 落ち着けない |
| なにをしていても痛い | 仕事などでもミスを誘発する |
| 説明しがたいイライラ感を伴う | |
| なにをするにも集中できない | |
| 処方箋の痛み止めが効かない | 気休めにはなる |
| 朝目が覚めると痛感がある | 朝から気が重くなる |
| 気が狂う痛み | (体内のため)手が届かない"逆剥け"がずっとある感じ |
| 自ら刃物を突き立て刳り取りたくもなるが、その勇気はない | |
| 酷いときは悶える痛さを感じる | |
| 救急車を呼びたくなる | |
| 歯磨きには影響ない | 強めに歯ブラシを当てても、痛みとしては響かない |
| 不規則に痛みが引くこともある | 痛めの違和感くらいに感じることもある |
| 医師との診察時だけは痛みが引いていたりする | |
| 普段痛いのに、 それを伝えられない もどかしさがある | |
| オノマトペで伝えられない痛さ | ズキズキ、ガンガン、 ジンジン、ギシギシ、 キリキリ、ヒリヒリ、 チクチク |
| どれも正しいような違うような、 ジンジン | |
| やがて神経からの響きが、 確かな痛感と思うようになる | 顎からエラ付近を通り、顳顬にかけて痛みが伝達する事がある |
| 伝達箇所は、人顔の神経が通るラインとも合致 | |
| 痛みを脳へ信号として届ける、 神経へ直接作用する痛みは、 異質の痛みを伴う | |
| 食事や咀嚼で、 常にある痛み | 食事が楽しくないのはストレスになる |
| 飲物やスープなどでは振動による痛みは無い | |
| 野菜くらいの固形物になると、 咀嚼振動が痛くて噛めない | |
| カラアゲのひと噛みごとに、 痛みが広がる | |
| チップス一枚割れた衝撃で、 とんでもない痛みの振動が伝わったことがある | |
| 食べた感がなく、 ヤケ食い衝動もあらわれる | |
| なにより食物が美味しくなくなる | |
| 診断を振り返ると、 原因不明の痛みとも解釈できる | 不明感のある痛みだとしても億劫感と違和感 |
| 一生痛みと付き合うことも不可能ではないが、 できることなら解消したい |
「埋伏智歯」なぜ痛むのか?
まず「埋伏智歯」とは、神経に引っかかるように位置しています。
そして「智歯」とは、もともと口腔外へ出ようとする性質があります。
髪の毛や指の爪が伸びようとするのと、同じ原理です。
自意識はなくとも、常に身体に発生しているわずかな力があり、
「埋伏智歯」と隣接する神経にとっては、常に痛みの受信として捉えられます。
「智歯」が骨に埋まっていたとしても、意地でも外に出ようとする、頑固な性質かもしれませんね。

歯の1本1本にも、それぞれ神経が通っています。
食物を噛むと、わずかながら振動が発生します。
咀嚼していると無意識かもしれませんが、
噛む動きというのは、歯の単純な上下動だけでなく、多方向に複雑に捻り擦り合わされながら咀嚼しています。

口腔筋とは、咀嚼の衝撃を和らげるクッションの役目ももっています。
歯の下にある口腔筋が主にクッションの役目となりますが、
ちょうど位置する箇所に難儀オヤシラズがあります。
肝心のクッションがとても薄い状態となっており、
咀嚼の振動や衝撃が直接「埋伏智歯」へと、
さらには神経にまで伝わり、神経は痛みとして受信します。

口腔筋クッションが、とても薄くなっていることを画像から感じられるでしょうか。
「智歯」の外へ出ようとする性質、
咀嚼における食事とは別の痛感覚、
それらが合わさり、常時慢性的痛みの原因となっている。
「埋伏智歯」の痛みの正体です。

多くの抜歯手術を行っている口腔外科医だとしても、これだけの深さに位置する「埋伏智歯」はあまり見ることがありません。
「埋伏智歯」があるだけでも異常、
さらに想定よりもさらに深く埋まっている「埋伏智歯」の抜歯は、極めて高度な技術が要求されます。
痛みに連動する腫れはあるか?
人体に痛みが発生する場合、捻挫例などでわかりやすいように腫れが発現するケースを多く見られます。
この患者の場合、痛みに伴う腫れは外見からは無いように思えます。

患部もとても小さく深いポイントのため、
腫れが発現していても体外まで認識できるほど大きくならない可能性もあります。
「埋伏智歯」も、エラ付近に近しい部分なので、
エラの大きい人によっては腫れがエラで隠れていることもよぎります。
痛みがあれば全員皆々、腫れの症状が患部に必ず発現するわけでもありません。

なぜ「埋伏智歯」の抜歯手術はそんなに難しいのか?
普通、口腔外科医として「智歯」を抜歯するとしても、神経は撤去しませんし、
ほとんどのケースでは神経は関係のない症例となっています。
画像のように「智歯」が埋まっているとしても、歯茎上部程度となるケースが一般的にほとんどだからです。
一方、
「埋伏智歯」のほうは、歯茎の奥深くにあり、しっかり神経の位置も関係してきます。
口腔外科医だけでなく、医師が手術する際には、極力人体の神経は撤去してはいけないことになっています。

| 神経を撤去してはいけないという、医師としての前提ルール |
| 神経を撤去しないと症状を解決できない局面 |
矛盾し相反する事柄となります。
医師としての大前提を遵守し神経を撤去せずに、痛みやオヤシラズを取り除く方法を考えるか、
もしくは遵守には反してでも、神経ごと痛みを撤去するかは、
医師によって判断が分かれるところではあります。
またどちらにしろ歯茎を、深く大きく切開することは変わりません。
近しいエラ付近には大きな血管も通っており、多量の出血も見込まれます。
その出血量は致死量へ近づくほどとなる可能性もあり、
場合によっては輸血も必要となるなど、患者本人への身体負担もかかります。
医師としても、患者にとっても、大きな負担のかかる難しい手術、それが「埋伏智歯」抜歯施術となります。
「埋伏智歯」周辺の炎症?
痛みの原因として難儀オヤシラズは関係なく、ただの口腔筋の炎症であるという可能性もあります。
確かに「人が感じる痛み」とは、元をたどると「炎症」から発せられる感覚です。
炎症とは
外傷・やけど・細菌・薬物・放射線などの作用によって自らに影響することを、身体が察し起こす防御反応のこと。
防御反応のかわりに、充血、腫れ、発熱、痛みなどの症状も発生させることになる。
「埋伏智歯」とはいえ、観点によっては、綺麗に骨の中に収まっているように見ることもできます。
その際は炎症箇所となっている口腔筋だけを撤去すれば、
あとは自然回復で痛みも収まるはずです。
もし、痛みの発生源が、本当に「埋伏智歯」や、神経そのものからくる痛みとしての真実であれば、
もし本当に神経も痛みの原因となっていれば、
是が非でも撤去しないと根源的痛みは収まりません。
ただやはり難しい位置にあります。
難しい「埋伏智歯」と神経の状況
もし本当に神経も痛みの原因となっていれば、
是が非でも撤去しないと根源的痛みは収まりません。
レントゲン画像では神経に重なっている様は閲覧できても、
体内の詳細な神経の位置や状態は把握できません。
実際に神経まで歯茎切開してみないと、
「埋伏智歯」と神経の状況関係の真実はわかりません。
それでも神経の位置に「埋伏智歯」がいることと、
痛みを感じていることから、
2つのパターンを想定できます。
1.神経が絡み付いているパターン

「埋伏智歯」全体に神経が絡み付いている場合、神経を避けて「埋伏智歯」だけを撤去することは至難、というかほぼ不可能です。
例えるなら、くまなく包装された網に入った蜜柑のようなものです。

中の蜜柑、どうやって取りますか?
密閉された網、つまりは絡み付いた神経をまずは引き裂かないと、
中身の蜜柑や「埋伏智歯」は取り出せません。
2.難儀オヤシラズが神経を引っ張っているパターン

「智歯」とはもともと外へ出ようとする性質があります。
「埋伏智歯」だとしても、外に出ようとする本能みたいな性質があります。
そして「埋伏智歯」末端だとしても、神経をつかんでいるような状態にあるとしたら...?
例えるなら、人がロープを引っ張っている様子をイメージすると具体像としやすいでしょうか?


付け根部分に神経が引っかかっていたとしたら、
「智歯」が外へ出ようとする力が発生するたびに、神経へは痛みとして伝達します。
「埋伏智歯」ですから、外に出ようとしても分厚い骨や歯茎の底となっているので、塞がれ口腔外へと出られませんが、
外に出ようとする力自体は作用します。
極僅かな力の発生源だとしても、それを直に伝わる神経は痛みと認識するわけです。
どうやって撤去する?
-
1.口腔内外からの精密ドリル
- 2.バッサリ切開
1.口腔内外からの精密ドリル
口腔内とエラ部分の両方から、精密ドリルを挿入し、難儀オヤシラズに向かって穴を開けていきます。
神経は一応避ける方向で考え、
(痛みを出していた余計な神経なので、遠慮なく削除してもいい神経とは思います)
難儀オヤシラズだけを細かく粉砕しながら撤去するイメージです。

大きく口腔筋を削ぎ落とすことになるので、自然回復だけでの口腔筋の復旧は時間がかかります。
そのため患者本人のお尻の筋肉を、埋め合わせとして代用します。
回復し、口腔筋とお尻の筋肉を馴染ませて十分な回復状態へともっていくには、3ヶ月ほどの経過治療が必要となります。
その間は食事もほとんどできません。
またお尻を削ることにもなるので、今度はデスクワークなどで痛むような心配も気になります。
代用として用いるお尻パーツは日常ほとんど接することのない、
側面パーツから徴取するのが望ましいと思われます。
2.バッサリ切開
エラから大胆に切り込みを入れて、神経ごと難儀オヤシラズを刳り撤去する方法です。
「1.精密ドリル」のときよりも、さらに大きく切開することも考えられるので、出血量も相当なものと予想できます。

その代わり、「埋伏智歯」とともに周辺神経もまとめて撤去するので、
手術後回復後の痛みは完全になくなる事が期待できます。
もはや歯だけでなく、整形手術の域も関係してくるかもしれません。
完璧な手術成功だとしても、エラから頬にかけては、大きな傷跡が残ります。
箔がつくと思えば、それも良いですよね?
厄介な「埋伏智歯」を持ってしまった患者としては、
傷跡が残ってもいいから、痛みの原因を根こそぎ削除したいと思うものです。
口腔外科学会
Webサイトには、
口腔外科学会認定「口腔外科専門医」名簿一覧のコーナーがあります。
口腔外科専門医として、学会の認定まで獲得するには、相応の難しいテストもあるとのことです。
口腔学会として認定されている医師であれば、
さらに病院内設備にも必要要素や、技術に適応できるだけの機器があれば、
「埋伏智歯」の抜歯手術も実行できる可能性があります。